技術コラム
アルミニウムの旋盤加工・旋削加工
アルミニウムは軽量でありながら優れた強度を誇るという特性から、自動車、航空宇宙、電子機器など多岐にわたる分野で使用されています。加工技術の進歩により、アルミニウムの可能性はさらに広がり、その需要は増加の一途を辿っています。そこで、今回はこのアルミニウムに焦点を当て、アルミニウムの基礎知識から旋盤加工におけるポイントまで詳しく解説したいと思います。
旋盤加工とは?
まず、改めて旋盤加工とは何かについて確認してみましょう。旋盤加工とは、旋盤加工機を用いて、回転させたワークに切削工具をあて、削り・穴あけ・切断を行う加工を指します。一方で、よく比較されるマシニング加工(フライス加工)は材料を固定し、回転する切削工具をあてて加工を行います。下記記事にて詳しく解説していますので、詳細は下記よりご覧ください。
アルミニウムとは?
アルミニウムは、上述の通り、軽量かつ優れた強度を持つ金属で、その柔軟性と加工性の高さから、近年幅広い用途で採用されています。熱伝導率や電気伝導率も高いため、電子機器の部品等にも用いられます。
アルミニウムの特長
特長①:軽量である
アルミの最大の特長は、軽さです。比重がわずか2.7であるアルミニウムは、鉄や銅と比較して大幅に軽量で、これにより摺動・回転部品の作動効率の向上、燃費の改善、電気消費量の低減といった効率化を実現します。アルミニウムを採用することで、これらの軽量化メリットを製品設計に取り入れることができるのです。
特長②:強度が高い
アルミニウムは軽量である上、強度が高い材料です。純アルミニウムだけに焦点を当てると、強度が高いわけではありませんが、マグネシウムやマンガンを添加したアルミニウムは強度が非常に高いです。このような材料を選択することで、軽量でありながら強度が必要な用途にも対応することが可能です。
特長③:熱伝導率が高い
アルミニウムの熱伝導率は非常に高く、熱しやすく冷めやすい性質を持っています。この高い熱伝導性を生かして、冷暖房装置、エンジン部品、各種熱交換器、放熱フィン、ヒートシンクなどの用途にも用いられています。
特長④:加工性が良い
アルミは切削加工性に優れているため、精密加工に適し、機械部品の素材に使用されています。ただし、熱伝導率が高いため工具が溶着しやすい、その他、柔らかいため、加工時に傷がつきやすいなどの注意点もあります。
アルミニウムの種類
1. 1000系アルミニウム(A1100、A1050など)
1000系アルミニウムは、純度が99.00%以上のアルミニウムで、加工性、耐食性、溶接性に優れており、家庭用品や電気器具などの製造に使用されています。その一方で、強度は比較的低めですが、強度が必要ない用途には最適な選択肢といえるでしょう。
2. 2000系合金(A2017、A2024など)
2000系合金は、銅を主要成分としたアルミ合金で、熱処理を施すことで高い強度を発揮します。特に航空機関連などで重宝されており、A2017やA2024といった材料はジュラルミンや超ジュラルミンとも呼ばれ、鋼材に匹敵する強度を持っています。
3. 3000系合金(A3003、A3004など)
3000系合金にはマンガンが添加され、純アルミニウムの加工性や耐食性を保ちつつ、強度が向上しています。
4. 4000系合金(A4032、A4043など)
4000系合金は、シリコンが主要成分として添加されており、熱による膨張の抑制と耐磨耗性の向上に寄与します。これらの特性は、特定の工業用途において非常に重宝されています。
5. 5000系合金(A5052、A5083など)
5000系合金は、マグネシウムを添加したアルミ合金で、アルミ合金中でも特にバランスの取れた性能を持っています。アルミニウムの旋盤加工で最も一般的に使用される材料の一つともいえます。
6. 6000系合金(A6061、A6022など)
6000系合金は、マグネシウムとシリコンを添加し、熱処理によって強度を高めたアルミ合金です。その耐食性と加工性の高さから、幅広い製品に利用されています。
7. 7000系合金(A7075など)
7000系合金は、アルミ合金中で最も高い強度を持つ系列であり、亜鉛とマグネシウムの添加により、熱処理でその特性を最大限に引き出します。A7075は特に航空機やスポーツ用品等をはじめ、高強度が要求される用途に使用され、その性能を発揮します。
アルミニウムの旋盤加工におけるポイント
アルミニウムの柔らかいという特性には、加工中に細心の注意を払う必要があります。通常の金属材料、例えば鉄やステンレスと同様の感覚で、アルミニウムを固定すると、加工品に傷をつけたり、変形や破損の原因になることがあります。この問題に対処するため、アルミニウムの旋盤加工においては、チャックの締め付け時に緩衝材を使用するなど、加工品に傷がつかないよう工夫が必要です。
また、細い径の加工品を扱う際は、切削工具が材料に接触することで外径が逃げやすくなるため、粗加工、中仕上げ、仕上げという三段階の工程を施すなどして、この問題に対応するようにしましょう。特に、旋盤加工での突切り作業は、歪みが生じやすいため、突切り後の仕上げ工程を慎重に行うことで、品質を確保できます。
さらに、アルミ加工時に発生する切粉は粘性が高く、連結しやすい特性があります。これを防ぐためには、切り込み量や切削速度の適切な調整が必要です。アルミニウムの旋盤加工では、これらの特性を考慮し、切削条件を最適化しましょう。
実際のアルミニウムの旋盤加工事例
事例:産業機械用スペーサー
こちらは、産業機械用のスペーサーです。内径の穴あけ加工を行った後、旋盤加工にて高精度に仕上げています。
アルミニウムの旋盤・旋削加工のことなら、旋盤加工コストダウンセンター.comにお任せください!
いかがでしたでしょうか。旋盤・旋削加工コストダウンセンター.comを運営する矢田製作所では、アルミニウムの旋盤加工を非常に得意としています。さらに、単に旋盤加工を行うのみならず、加工図面に対するVA/VEコストダウン提案も可能であり、アルミニウム旋盤加工品の量産コストダウンを実現します。
アルミニウムの旋盤加工の委託先にお困りの皆様、まずは一度当社にご相談ください。